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「………」 「………」 沈黙が痛い。 和希がいなくなってから歩き出しても会話がない。 「……さっきのあいつ何?」 「へ?」 「……元カレ?」 「同期の友達」 「……ただの、じゃないだろ」 告白はされたけど、さっきの和希の発言は私も想定外だった。 「少し前に告白されて、断ってからは良い友達」 「あいつはそういう感じじゃなかったぞ」 「……知らないわよ」 「思わせ振りなことしてんじゃないの?」 明らかにイラついてるのも分かる。 私だって、和希の発言に戸惑いを感じている。 「本気でそう思ってんの?」 「あいつは諦めてないし、俺に喧嘩吹っ掛けてきたんだからそう思っても不思議じゃ、ない……」 彼が私を見たのが分かる。 どうしてかな? 悔しくて、俯いて徐々に溢れてくる涙をこぼさないようにするのに必死で。 彼の前で泣きたくないって思った。 「結華」 視界の隅に見えた伸ばされた腕と大きな手。 「触らないでよ」 顔をあげると、更に驚いた彼と目が合った。 「あなたから見た私はそういう女なんだ」 「結華?」 「思わせ振りなことをしてるかもしれないけど、あなたに言われたくない! 私がどんな想いで!」 言いたいことは沢山あるのに、言葉にならない。 私は、この人と向き合うために和希を傷つけたのに。 こんな想いをするぐらいなら。 「断らなければ、良かった」
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