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「ちょっと、どこ行くの!?」
手を引かれて、ようやく立ち止まった時には息が上がっていた。
ナンパ君は涼しい顔をしている。
歳の差を思い知らされる。
「ちょっと待ってて」
道路のすみで息を整える。
逃げ出してきてしまった。
手を引かれても振り払うことも出来たのに。
「はい」
目の前には美味しそうなグレープ。
笑顔で手渡してから自分の分にかぶりついていた。
「……ありがとう」
「どーいたしまして」
「……なんで、こんなことしたの?」
「んーなんか結華ちゃんが泣きそうな顔してたから」
「一応、私年上でちゃんづけされるの、なんか嫌なんだけど」
「そんなに歳変わんないじゃん」
「十代と一緒にしないの」
「ねーちゃんみてー」
コロコロ表情が変わるのは可愛らしい。
歳だけ見たら姉弟でもおかしくない。
「……でも、ありがとね。えと、名前なんだっけ?」
「結構、フツーに結華ちゃんヒドイよね」
「わ、悪かったわね」
「月斗。覚えてよ?」
「あーそう言えば私聞いたね」
「本当だよ。聞いといて」
肩を落とした姿は、中型犬が耳と尻尾を垂れたのと似ている。
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