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「親しみやすさで読んでもらえる俺はジャンル別で一歩リード」 笑顔を絶やさない月斗に、自分の嫌な部分が浮かび上がる。 周りを振り回して傷つけて心配させているのも分かっていながら自分自身に答えが出せないでいる。 「月斗は悩んで悩んで、それでも答えが出なかったらどうしてる?」 「状況にもよるね。でも俺は、自分が欲しいものを取りに行くよ。相手を思いやりながらね」 お金で解決するならバイトなり仕事を頑張ればいい。 人と人との関わりだから自分自身と向き合うから苦しいんだ。 「さて、フラれちゃったし」 足を止めてから、月斗が優しく笑う。 「どうしたの?」 「せめて記念ちょーだい」 「記念って、あげられるものなんて」 バッグを漁ろうとした手を掴まれ、近くに月斗の顔。 「物はいらない」 年下でも背格好だけは私より大きくて、月斗の顔が一気に私におりてきて。 「結華!」 呆然としていた私に、意識が戻った。 声のしたほうに視線を向ければ、肩を上下させて息をきらしている彼がいた。 「あーあ。イイトコだったのに」 小声で呟いた声に、見上げるとイタズラが成功したみたいな顔があった。 なんだか、和希と似てる。 「ガキはさっさと帰って勉強しろ」 冷たい声。 彼の再登場でも月斗は動じてない。 むしろ楽しそう。 「これも勉強でしょう? お兄さんこそ帰って仕事したら?」
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