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「そう言われたら返す言葉はないね。でも仮にも俺、あそこのオーナーの身でいつも自分の客置いて他の女のところに行ったりしないよ。結華だったから、だよ」
彼の言葉ひとつひとつに想いが込められているのが分かる。
「そのわりに、初対面の私に似合わないってどうなの?」
あの言葉は地味にショックだった。
「だって結華スプリングなのに全然花がないし、すぐにでも干からびそうな上に選ぶ服も黒だし全く似合ってないから思わず、ね」
失礼だ。
こうもポンポン言われたらいくら私でも傷つく。
「逃げてる自分が嫌だったんだろ? 黒は全てを覆い隠すんだ。あの時の結華にピッタリと言えばピッタリだな」
「……」
言い返したいけど、まるで知ってる風に話す彼に何も言えなかった。
「ピンクのワンピースにしたのは?」
「目の前で枯れてしまいそうな花を自分の手で今以上に咲かせて見たかった。本当はもっと自然に笑えるのにって思ったから」
いっそ、嫌がらせなら良かったのに。
あの時から、どんな想いで私といたんだろう。
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