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「……今」 驚きを隠せない彼。 「……」 私、今どう思った? 指先のぬくもりが暖かかった。 離れてほしくなかった。 ……初めて、名前を呼んだ。 「結華?」 彼の声と、手が届く距離。 私が感じたこと。 改めて、思い返すと顔に熱が集まる。 「結華、さっき」 恥ずかしくて、思い切り声をあげた。 「翼のバカ!!って言ったの!」 「は? 聞こえなかったけど。しかも名前で」 「だから!? 別に嫌だから呼ばなかったわけじゃなくてタイミングなかっただけで」 色々と突っ込まれるのが嫌で早口になる。 あー…カッコ悪い。 うなだれていると、頬に微かなぬくもりを感じる。 「もう一度、呼んで」 目線だけあげれば、嬉しそうな彼がいる。 「……嫌」 「ケチ」 ほぼ無意識で呼んだ後に、本人を前にして呼ぶのはかなり恥ずかしい。 拗ねたように見せ、何か思い付いたのか途端に笑顔になった。 「じゃあ、代わりにコレで」 意味がわからずに、顔を少しあげたのが間違いだった。 唇に暖かくて柔らかい感触。 すぐに離れ、かなり満足顔をした彼がいた。 何も考えられなくて、とりあえず 「何すんのよ!?」 怒鳴った。
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