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あれから強引に手を引かれて、短い時間手を繋いで駅まで歩いた。 「……で、結局ノロケたいわけ?」 「そうじゃなくて、報告というか」 「……別に、結華があの腹黒ナルシスト野郎とどうなろうと知ったことじゃないわよ」 「機嫌悪い?」 翼のことを話すと、華のある笑みから黒い笑みに変化した。 「悪くなったの」 「……ゴメン」 「結華にイラついてるんじゃない。榊原翼にムカついてるの」 「なんで梓が怒ってるの?」 昼休みの社食。 食後の珈琲を飲みながら、穏やかな雰囲気が梓のオーラで一変する。 「……だって、悔しい」 「ヤキモチ?」 「あの人も独占的強そうだし、取られたみたい」 拗ねた梓も可愛い。 同性でも、そう言ってもらえるのは嬉しい。 「梓は梓。翼は翼だよ?」 「わかってるよ。でも、相手があの人だから余計ムカつくの!」 しばらくは、おさまりそうにない。 「荒れてるな、どうしたんだ?」 「坂井君、お疲れ」 「お疲れさん。機嫌悪そうだな」 「聞いてよー結華が毒牙の餌食になったの」 「ちょっと梓、変な言い方しないでよ!」 「あぁ、上手くいったんだ」 「え? 坂井君知ってるの?」 「一応。煽って正解だったな」 「……やっぱり。いつもの和希っぽくなかったし」 あの日の和希は、私から見ても違和感があった。 畳み掛けるような言い方。 挑発的な態度。 最後に私に向けた表情。 「同じ男として、好きな女を泣かせる奴は俺はキライだ」 「私も」 梓が和希の言葉に大きく頷いた。
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