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「というわけで、そっちの都合のいい日で考えたいんだけど」 あれから梓と和希とわかれてから、翼に電話してみた。 意外にもすぐ出てくれて、先程のやり取りを伝えた。 「……」 「聞いてる?」 「結華から珍しく電話あったと思ったら、あの人からの呼び出しか」 電話越しから聞こえる大きな溜め息。 声のトーンも低い。 「ごめんなさい。梓が納得した感じじゃなくて。和希も会えばって背中押しちゃったから」 「まぁいずれはこうなるんだろうな。あの気の強いお嬢さんに認めてもらわないと、結華に手を出したら刺されそうだ」 冗談だと分かっていても、梓なら殴り込みぐらいはしそうだ。 「日曜日でいい?」 「分かった。梓に伝えとくね」 「美人が怒ると怖いだろうな」 「この間はワザと怒らせたくせに」 「ついな。悪い、またかけなおすよ」 「いいよ、私も戻らないといけないから」 「結華」 「なに?」 「電話ありがとな。声が聞けたから頑張れそう」 この人ってなんでこんなに不意討ちが得意なんだろう。 声だけで、微笑む翼が想像できてこっちまで嬉しくなる。 以前なら、こんなことで電話せずメールですましていたのに。 「頑張って」 「結華もな」 通話が切れて、嬉しい余韻が胸に広がる。 携帯をしまって歩きだすと、角のところで男性とぶつかってしまった。 「すみません」 聞き覚えのある謝罪の声に顔をあげると、 「……中野君」 私はなんで、この人とよくぶつかるんだろう。
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