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「よくぶつかるね」 「あぁ、悪かったな」 「ううん。私こそ」 珍しく黒縁メガネをかけている。 普段はコンタクトなのかと頭の隅で思った。 そう言えばと、月斗のことを思い出す。 「中野君って兄弟いる?」 「いるけど、なに突然」 「高校生?」 頷く中野君を見て、嘘ではないと改めて思った。 「知ってんの?」 たいして驚いたリアクションもせずに聞いてきた。 「駅で会ったことがあって。中野君のこと教えてくれたの。ビックリしたよ」 さすがにナンパされて、頬とはいえキスされたとは言えない。 「……なんか言ってた?」 「なにを?」 「俺のこと」 意味が分からずに首を傾げ、もう一度聞こうとした時に明るい声がそれを遮った。 「結華、そろそろ時間だよ」 電話することを伝えていたし、時間も時間だから気になったようだ。 「あ、中野君お疲れ」 「ん」 「んで、あの人なんだって?」 「次の日曜日でいいかと」 「分かった! 楽しみね」 それだけ言って、私を置いてさっさと行ってしまった。 「日曜日、なんかあんの?」 珍しく中野君から話題を持ちかけられた。 「えっと、私と梓ともうひとりくるんだけど、話し合い、かな」 和希の友達である中野君に、翼のことを言うのは少し気が引ける。 当たらずとも遠からずな返事になってしまったけど、特に問い詰められることもなかった。
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