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入社して三年。 同期なのに中野君とはほとんど口をきいたことがなかった。 笑っていて、和希のような人の良さは出ているのに、なんだか胡散臭くて。 私が勝手に苦手意識を持っていたけど、胡散臭いのはあながち間違っていなかった。 他の女子社員には優しいと評判なのに、私にはニコリともしない愛想のなさ。 まぁ、普段の中野君の毒舌を知っているから笑顔を向けられたら怖いだけなんだけど。 と、そんなことを考えていたら中野君がジッと私を見ていた。 「……なに?」 考えていることが顔に出たか不安だった。 「いや、マシになったと思って」 「マシ?」 「目が死んでない」 「どういう意味かな?」 これってケンカ売ってるよね? 「そのまんまだ。最近までウザイぐらい鬱陶しいツラしやがって」 反論しようとしてやめた。 確かに、最近まで翼のことでグチャグチャだった。 「……中野君は?」 「なにが?」 「なんか変だから」 どこがと聞かれたらわからない。 でも、普段ならこんなことさえ言わない気がする。 「お前に言われたらおしまいだな」 いつもみたいに口調は悪いけど、どこか力がない。 「はぐらかさないでよ……私のせい?」 「違う。元々お前は関係無い」 「じゃあ」 「はい、終わり。早く戻れば」 時計を見るとさすがにヤバい。
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