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まだ言いたいことがあったけど、とりあえず引くしかなかった。
「……戻る」
「早く行けよ」
納得がいかない部分はそのまま。
もしかしたら、私が聞こうとしたことを察したのかもしれない。
和希が知っているかわからないけど、きっと私だけが知っている中野君の秘密。
「神白」
呼び止められるなんて思ってなかったから、おそるおそる振り向いた。
「アイツ、最近悩んでるみたいだから、話し相手になってやって」
アイツなんて、普通分からない。
分かったのは、苦笑いを浮かべながら少しだけ困った顔をしていたから。
「中野君がやれば?」
自分でも驚くぐらい素っ気ない声だった。
「俺じゃダメなんだよ」
「そう思ってるのは中野君だけじゃないの?」
「……やっぱお前ムカつくわ」
「ありがと」
戻りながら、やっぱり嫌われていたのかと納得した。
珍しく落ち込んでいる中野君なんて初めて見た。
私が翼のことで悩んでいる時に何かあった。
まだ何も聞いてないから私からは動けない。
もどかしさを抱えたまま、仕事に戻った。
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