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定時になって、更衣室に行くと梓はもう着替え終わって、軽く化粧直しをしていた。
「デート?」
「うん。久しぶりにご飯行こうって」
「そっか」
まだ何も知らない。
でも、知らないからこそ聞けることもある。
「梓、大丈夫? 無理してない?」
梓の化粧直しの手が止まった。
「無理なんてしてないよ」
「だって、元気ないから」
「どこが!? 私元気だよ。誰か言ってた?」
「うん。心配してたよ」
あえて、誰とは言わなかった。
「私をそんな風に見るなんてよっぽど目が悪いのね」
肩をすくめながら苦笑いをする梓に胸が痛んだ。
「そろそろ行かないと。またね結華」
「うん、いってらっしゃい」
ドアが閉まって、すぐに開いたら他の部署の人達が入ってきた。
賑やかになる室内。
だけど、私には何も聞こえなかった。
携帯を手にとり、なんとくいじる。
着信履歴に翼の名前を見て泣きたくなった。
ボタンを押してしまえばいいだけなのに、それが出来ない。
モヤモヤしたまま、着替えて外に出た。
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