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外に出ると数人の女の子が騒いでいた。
モヤモヤしているときに騒がれるとイラッとする。
女の子の視線を辿れば、見慣れたふたり組がいた。
それにしても目立つし、組み合わせが珍しい。
「あ、結華ちゃーん!」
大きな手をブンブン降るのは最近会った月斗。
その横には相変わらず無愛想な中野君がいた。
「お疲れ」
本当に会社知ってたんだと改めて思った。
「お疲れ。どうかしたの?」
「ちょっと用事があってね」
以前なら見てもなんとも思わなかった光景が、兄弟と知るだけでこうも違う。
「じゃ帰る」
めんどくさそうに言って私達に背を向けた。
「うん、お疲れ」
その背中を見送ると月斗が言った。
「もう少し愛想良ければいいのにね」
弟からも言われてるし。
「まぁそれは置いといて、どうしたの結華ちゃん」
「え?」
「泣きそうな顔してる」
ふたりの存在で忘れかけていたことが一気に思い出した。
「な、なんでも」
「あの日と同じ顔してるよ。でもちょっと違うかな。どうしたの?」
こんなときに、優しくしないで欲しい。
その優しさにすがってしまう。
だから、翼に電話したくても出来なかったのに。
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