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「はい。よく出来ました」 そう言ってニッコリ笑って頭を撫でる。 「人間素直が一番だよ。まぁ素直過ぎるのは時と場合によるけど」 「……どうせ私は素直じゃないわよ」 「んーだから素直にさせたくなるのかな?」 撫でる手は変わらず。 どっちが年上か分からない。 「今度は俺に付き合ってね。こう見えて、繊細だから」 「そうは見えないよ」 「うん。よく言われる」 「いいよ。付き合ってあげる」 「じゃあ約束」 小指を差し出す月斗。 こういう時は、年相応に見える。 「はいはい。約束ね」 「結華!」 「あ、お迎え来たから俺帰るよ。じゃあね」 翼が駆け寄る前に、月斗は反対方向に手を振って去って行った。 「またアイツか」 肩を上下に動かして、月斗の背中を軽く睨んでいる。 「睨まないであげて。慰めてもらっただけだから」 「……なんで? なんかあった?あ、もしかして、それでアイツ早く来いって言ったのか?」 次々と質問されて、どれに答えようか考えていたら、温かいぬくもりに包まれた。 「どうした?」 優しい声に安心する。 翼の優しさに甘えることが出来なかった。 やっぱり私は素直じゃない。 「梓のことを私より気づいてあげられる人がいて、嫉妬して何もしてあげられない自分が嫌だった」 素直になれなかったのは、弱い自分を見せたくなかったから。 下らないプライドも、翼の前じゃなんの意味もないのに。
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