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「ま、待ってるから頑張って」
「うん。ゴメンな。すぐ終わらせるから」
「だったら早くしてください。イチャイチャするのも後にして」
「分かったから怒るなよ」
苦笑いしながらディスクに戻り、室内に静寂が漂う。
カチャカチャとキーボードの音が静かに響く。
やることがない私はソファーに座り、ふたりの邪魔をしないよう黙って見ていた。
普段は楽しくしている姿しか見ていないから、こういう事務作業中を見るのも何だか新鮮だった。
しばらくして、手持ちぶさたもありもう一度お茶を淹れてふたりの邪魔にならないところにソッと置いた。
雑誌を見ながら時間を過ぎるのを待ってみても、少しずつ襲う睡魔に負けそうになる。
「終わりますか?」
「あと少し」
半分ぐらいになった意識の中で、ふたりの会話が頭に入る。
「全く、杏さんがいたら怒り狂って、私でも手つけられないですよ」
「……分かってるよ。ただ、どうしても放っておけないんだ」
「今度、連休くださいね。たまには羽目外したいんで」
「いつも外してるだろうが」
「先生うるさいですよ。私終わりました」
「俺も終わったよ。あ、連休は杏に言え」
「え゙ー先生からも言ってくださいよ! 私の今日の頑張り無下にするつもりですか!?」
「飯奢るから勘弁してくれ」
「分かりましたよ」
泉さんの納得いかない言葉のあと、肩に手が添えられた。
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