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「え!? あぁだからなんか似てると思った」
意外と近くにいたこともあり、さりげなく少し離れた。
「あ、珈琲ありがとう」
ソファーに戻って砂糖とミルクを適当に入れた。
味が全くしない。
「結華」
静か過ぎる空間に、翼の声が響く。
「な、なに?」
「緊張しなくていい。結華が嫌なら何もしないから」
柔らかい笑みだった。
ここに来たいと思ったのは私なのに、翼に気を遣わせてしまった。
「ち、違うの! 緊張はしてるけど、その、嫌とかじゃなくて!」
「そう?」
「ただ、あの」
恥ずかしいだけ。
久しぶりの感覚に、自分でどうしたらいいのか分からない。
「いいよ。結華のペースでいいから」
「……翼が余裕なのに、私は全然余裕がなくて。でも嫌じゃないから」
「分かってるよ。嫌なら結華絶対来ないだろ」
「……うん」
「結華は俺が余裕って言うけど、俺も同じだよ。余裕なんかない。余裕がないからここに誘った。今だけは俺だけのものにしたくて、触れたくて」
身体に指一本触れられていないのに、真っ直ぐに向けられた瞳に拘束されたよう。
「夢でもみてんのかなって思った。結華がそばにいて、受け入れようとしているのが凄い分かるから」
素直に胸にストンと落ちてきた。
私はこの人の特別でありたい、と。
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