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「翼」 「ん、何?」 「……き、です」 「ゴメン、聞こえなかった」 「………」 「結華?」 俯いた私。 覗きこもうとする翼を避けようとはしなかった。 顔を上げて、いつも翼が私にするように真っ直ぐに翼を見る。 言えるかどうか不安だった。 でも、迷う必要がないぐらい想いが溢れてきた。 「翼が、好きです」 言葉と想いが一緒になって、涙となり流れ落ちた。 拭おうとした手を翼に掴まれた。 目元に触れた温かく柔らかい感触。 「しょっぱい」 「な、なにして!?」 「んー、つい」 人がせっかく告白したというのに! 笑いながら抱きしめられる。 「俺も結華が好きです。誰にも渡したくないぐらい」 耳元で囁かれた言葉を、頭の中で繰り返しているとクラクラしてきた。 翼に抱きしめられていなければ倒れてしまいそう。 そう思って服を掴む手に力が入った。 「……無意識って質悪ぃ」 「え?」 「なんでもない」 スッと身体が離れた。 「頭冷やしてくる。部屋の中は好きに使っていいから」 そう行って部屋を出た。 私も頭がパンク寸前だったから正直助かった。 ソファーに身体を預けて目を閉じた。
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