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誰かと同じ空間にいて。 行動を共にして、楽しいとか嬉しいと感じたことはたくさんあった。 でも、幸せだなと思ったのは初めて。 高価なプレゼントを贈られたわけでもない。 豪華なホテルでご馳走されたわけでもない。 ただそばにいて、私だけを見てくれる。 ひとつひとつの言葉が嬉しくて涙が出そう。 些細なことが蓄積されて、胸がいっぱいになる。 翼がいてくれる。 こんなに、幸せをもらって私は返せているのかな? 意識が曖昧になって、身体までフワフワしてきたみたいだ。 温かくて好きな人のぬくもりがある。 凄い、いい夢。 「翼」 小さく呟いた名前。 返す言葉はなかったけど、ぬくもりが離れて柔らかい場所に横にされた。 頭を優しく撫でられた後に、大きな手が頬に移動して唇に微かに熱が集まる。 「おやすみ」 ぬくもりも熱も離れる。 「ヤダ……行かないで」 夢だからこそ、こんな風に言える。 「いていい?」 「うん。そばにいて欲しい」 返事の代わりに離れたぬくもりが戻ってくる。 「……あったかい」 「結華のこと好きでいい?」 「……私は暫く翼以外誰もいらない」 「俺もだよ」 包まれる身体。 安心感が溢れて、もっといい夢がみれそう。
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