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「行かない、だろ?」 心配か多少は動揺するかと思ったのに、自信たっぷりに言われて悔しい。 「てか、離さないから」 「人のこと猫扱いしといて」 「俺、猫好きなの」 「……分かったから。ご飯食べよ」 身体を離して支度を再開。 ほとんど終わっていたから後は片付けだけ。 「置いといていいよ。先食おう」 「すぐ終わるから」 そう言って片付けようとした私の腕を掴む。 「せっかく結華と一緒にいるのに時間もったいないじゃん」 そのまま椅子に座るよう促された。 「飯ありがと。普段、朝は珈琲だけだから。いただきます」 「はい、どうぞ」 作ったと言っても、卵やウインナーを炒めただけだし、ご飯はお茶碗に入れただけ。 作ったと言えるのは味噌汁ぐらい。 「美味しい」 「ありがとう」 久しぶりに言われるとなんだか照れ臭い。 しかも、こういうシチュエーションって。 「新婚みたいだね」 「えっ!?」 今まさに自分で思ったことを言われて驚いた。 奥さんになった自分を想像してみる。 翼の寝顔をみて、朝食の準備。 一緒に食べて翼を見送る朝。 悪く、ない。 そう思う自分がいた。
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