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「思いだし笑い?」 「ううん。ちょっと考え事」 昼休みになって梓とランチ。 今日は天気があまり良くないから社食でゆっくりする。 「なんか結華変わったね」 「どこが?」 「んー具体的には言えないけど雰囲気、かな?」 「そう? 梓に言われるならそうなのかな。自分じゃ全く分かんないし変わってないよ?」 「変わったよ。笑顔が前より優しくなった」 「……前の私ってどんな風に笑ってたの?」 私の問いに、梓が笑いながら答える。 「悪い意味じゃないよ。更に良くなったってこと」 「ならいいけど」 自分じゃ自覚がないからリアクションに困る。 「凄いね」 梓が窓の外を眺めながら、呟いた。 なんだか梓を取り巻く空気が一気に澄みきって、口を挟んではいけない気がした。 「結華」 ハッとして意識が戻ってくる。 梓はまだ、窓の外を見つめたまま。 「……雨、降ってきたね」 「……うん」 つられて私も梓と同じように眺めた。 梓は何を見てるんだろう。 「あ」 思わず声に出してしまったけど、梓は気にした様子もなく窓の外を見つめていた。 無意識、なのかな? それとも自覚してる? 私の都合のいい勘違い? 雨が降ってきたにも関わらず煙草を吸って雨宿りしてる。 中野君?
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