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雨宿りしていると和希と合流して雑談をしている。
梓はただ、何も言わずに眺めていた。
「仲良いいよね。あのふたり」
「そうだね」
フッと空気が柔らかくなって梓が笑った。
「思い出し笑い?」
今度は私が梓と同じセリフを言ってみる。
「ゴメン。フラれるときは雨が多かったなあと思って」
「え? 初耳だし」
「言ってなかった?」
「言ってない」
梓がフラれるなんて想像できない。
「梓がフッたんじゃなくて?」
「うん。最後の別れ際ぐらい泣けよとか意味不明なこと言う奴とかいたね」
「うわ、ウザイ」
そんな奴がいたら梓の代わりにぶん殴ってやりたい。
「だから、坂井君とか見てたら良い人だなと思って」
「……中野君もいい人、だよ?」
一瞬、梓の目が見開いたかと思ったら小さく笑った。
「珍しいね。結華が中野君のこと褒めるなんて」
「……最近、少しだけそう思う、気がする」
本当の彼はきっと優しい人。
でも、私は知らなくていい。
「中野君も優しいよね。人のことより自分のこと考えればいいのに」
「何かあったの?」
「相談のってくれたって歌穂が騒いでた」
他の人に優しくて、好きな人は見てるだけなんて納得いかない。
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