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「……やっぱり、キライ」 「なにそれ?」 ムッとした私に対して梓はさっきの表情が嘘みたいによく笑う。 良かった。 たった数分間のことだけど、さっきの梓はまるでガラス細工のように儚くて壊れてしまいそうだったから。 「だって中野君、私には意地悪だし毒舌だし何気に女タラシだから」 いっそ、泣いてくれたらいいのに。 梓のことだから、言ったら絶対泣かない。 「中野君は本当は優しい人だよ。口が悪いのは元からかもだけど、女は勝手に寄ってきてるじゃん」 「……よく分かってるね」 「見てたら分かるよ」 「じゃあなんで私には態度悪いのよ?」 「それは結華がハッキリしなかったからでしょう? 今はそんなに意地悪くないと思うよ」 「……確かに」 最近は少しずつ話すようになったし、以前のように毒舌はなくなった。 それでも、納得いかないのは消えない。 「……ムカつく」 やっぱりキライだ。 人にはハッキリしろとか言っておいて、自分は見守って忘れずにいるなんて。 「まぁまぁ。仲良くね」 もどかしさが溢れる。 梓から見た私もこんな感じだったのかな。 仕事が終わってから、今日は翼のマンションに行くかどうか迷っていた。 今は、すぐにでも会いに行きたい。
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