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「結華お疲れ。もう帰るのか?」 「和希もお疲れ。うん。今日はちょっと寄りたいとこあって」 「そっか。相模は落ち着いたか?」 朝のことらしい。 和希も中野君も昼休みに私達が見ただけで、話したわけじゃない。 和希なりに気にかけていたみたいだ。 「多分。梓なりに葛藤してると思う」 「らしくない、よな」 「でも、話してくれるまで待つつもり。もし和希に話したとしても言わなくていいから。梓の口から直接聞きたい」 「分かった。んじゃ、またな」 「うん。じゃあね」 出入口に行こうとして、雨のことを思い出した。 傘がないからもう一度、更衣室に戻ろうとした瞬間に和希の声がそれを遮った。 「結華、そのままでいいよ」 「雨やんでた?」 「まだ降ってるけど、結華は必要ない」 「どういうこと?」 和希の言っていることが矛盾していて、余計分からなくなる。 「いいから。寄るとこあるんだろ?」 和希の言う通りに出入口のほうにゆっくり向かった。 正面から違う部署の女の子達が騒がしくすれ違い、少し会話が聞こえた。 「さっきの人カッコよかったね!」 「ホントに! 誰か待ってんのかな?」 「てことは、ここの社員? いいなぁあんな人が彼氏とか」 聞き耳たてなくても嫌でも聞こえてきた。 誰かいるみたいだけど、誰かさっぱり分からない。 頭の中がハテナマークでいっぱいになったところで自動ドアが開き、会いたかった人が、会いに行こうとしていた人が目の前にいた。
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