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「私も勉強したし視れないことないけど、ひとりが限界。一日に何人もほぼ毎日なんてムリ」
「……翼は毎日?」
「ほぼ毎日、予約でいっぱい。しかも翼に色目使う女も多いから、こっちがうんざりするっていうか」
大きなため息。
いつも明るい杏さんがこんなに表情を暗くするのを初めて見る。
「ごめんなさい。結華チャンだってお客さんだったのに、愚痴ってしまって」
「いいえ、華やかな仕事だけど大変なんですね」
いつも私といるときには疲れた表情なんて見せたことなくて。
疲れてたのに、私を追いかけてきたり怒ったり、どんな気持ちで私を見ていたんだろう。
「……翼が結華チャンに入れ込むのが分かるなぁ。何か、つい寄りかかってしまいたくなる」
「私、何も出来ない、です」
「結華チャンの存在が安心するの。能力や才能の問題じゃない」
どうして、翼といい杏さんは欲しい言葉をくれるんだろう。
「……初めて、なんです。この人の特別でありたいと願ったの」
「そう。その気持ち大事にして」
杏さんが翼のお義姉さんっていうのが大きかった。
でも、それを差し引いても言わずにいられなかった。
「翼はこう見えて一途よ。ねぇ?」
「……こう見えては余計だ」
いつの間にか目を覚ましていた。
杏さんを睨んで、気のせいか耳が赤い気がする。
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