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「目が覚めたらベッドに行きなさいよ。義弟のイチャついてるとこなんて見たくないんだけど」
「……俺の家なんだから何しようと勝手だろ」
そう言って、起き上がる気配がない。
「全く。結華チャン悪いけどもう少し付き合ってやって。私帰るわ」
「え、もう帰るんですか?」
「用は済んだから。じゃあまたね」
立ち上がる杏さんを追いかけようとしたけど、翼がそうさせなかった。
「いいよ、結華チャン。それとさっきは本当にごめんなさい。私も疲れてたみたい」
愚痴ったことに対してだろうか。
「たまにはいいじゃないですか。杏さんが話してくれて私嬉しかったですよ?」
小さな捌け口にしかならないだろう。
それでもいいから溜め込んで欲しくない。
「またご飯でも行きましょう。結華チャンのこともっと好きになったわ」
「私も杏さん好きですよ。梓も誘っておきますね」
「うん。おやすみなさい」
手を振って姿が見えなくなり扉が閉まった。
「……ズルい」
小さく翼が呟く。
口出してこなかったから寝たのかと思っていた。
「なに?」
私に背を向けて、変わらず膝を占領している。
「……俺はやっとこの間、結華に好きって言ってもらえたのに杏はあっさり言われて、なんか腹立つ」
どうやら拗ねていたらしい。
好きの重みが違うこと、きっと分かってるんだろうけど。
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