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「乾杯ー!」
グラスが当たる音。
騒がしい男女の声が楽しそうで、それが余計にテンションを下げる。
「なに暗い顔してんのよ。酒が不味くなる」
同僚の相模 梓。
顔は悪くない。というか整っている。ムカつくぐらい。
「たかが部長に呼び出しくらったからって」
言いながらビールを飲む。プハーなんて言ってる姿はおっさんだ。
憧れを抱いている会社の男連中に見せてやりたい。
「あんなの八つ当たりでしょー! あの時たまたま私がいたから。あー思い出すと腹が立ってきた!!」
「だから私が付き合ってやってるんでしょ。デートの約束あったのに」
「……頼んでないけど」
恩着せがましい言い方するけど、今日はひとりで静かに飲もうかと思っていた。
「ひとりで飲んでたって吐き出せないでしょ?」
揚げ豆腐を美味しそうに食べながら横目で見る。
「……うん」
「あ、あれ美味しそう! すみませーん」
梓は無茶苦茶なことしたり言ったりするけど、さりげない優しさが嬉しい。
「ところで、坂井君とはどうなの?」
「は? なんで坂井君が出てくんのよ」
坂井君とは同期で入社した。人見知りをしない性格もありすぐに仲良くなって、今でもよく飲みに行く。
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