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勢いで素っぴんで出てきたのを少しだけ後悔したのは、会社の近くだったというのを思い出したから。 居酒屋について梓達を探す。 出入口からそんなに遠くない場所で、梓が淡々とグラスを傾けていた。 「梓!」 「……結華?」 梓はなんでここにいるんだと少し驚いてた。 和希は助かったと言わんばかりの苦笑だった。 「帰ろう?」 「飲み始めたばかりだから」 「ウソ。かなり飲んでるでしょう」 「……だって、全然酔えないし」 「明日仕事は?」 「休み」 「和希、あとは私が付き合うからいいよ。ありがとう」 「悪いな。わざわざ来てもらって」 「ううん。連絡ありがとう。ゆっくり休んで」 私は座らずに梓を見続けた。 だって、明らかに梓らしくない飲み方。 「とにかく、帰ろう?」 「……イヤ」 「私、素っぴんで恥ずかしいんだけど」 「結華は帰っていいから。榊原翼と一緒だったんでしょう?」 素っ気なく、視線すら合わせない。 私、知ってる。 誰かにそばにいてほしい。 何でもないことを聞いてほしい。 ただ、考えたくないからバカをして笑いたい。 以前の私みたいだったから。 「……抱え込まないでよ。お酒でも気が紛れないぐらいなんでしょ?」 無意識に他人にSOSを出している。 本人は全然自覚がない。 だから、ほっとけない。
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