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「……結華、聞いてくれる?」
「いいよ」
向かいに座っていたのを移動して、梓の隣に座って手を握った。
「……あの、ね」
「うん」
「……上城君からプロポーズされて」
「はぁ!?」
「……返事は待ってもらってるんだけど」
少しずつ話す梓に、本当に悩んでいることは上城君にプロポーズされたことじゃない、別のなにか。
「……なんか、自分でも自分の気持ちが分からなくて。そんな時に中野君がおめでとうなんて言うから頭にきて、言いたいこと言った挙げ句殴って坂井君に付き合ってもらったの」
「……中野君?」
「聞かれた」
「えと、別に悪態つかれたわけじゃないなら、なんで?」
いくらなんでも何もないのに殴るまでいくなんて、よっぽどだ。
「私がそこでオッケーなら別。だけど、私返事してないし混乱してるときに、他の女達に向けてる笑顔でおめでとうなんて言ってきてバカにされてる、気がして」
始めは勢いがあったけど、徐々に冷静になってきたのか語尾が小さくなった。
「あのさ」
俯いていた梓がピクッと身体を震わせた。
顔をあげてくれない。
「私の主観でなんだけど、今の梓の悩みの中心は上城君じゃなくて、中野君なの?」
図星なのか手に力が入って強く握り返された。
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