13

5/34
前へ
/395ページ
次へ
「プロポーズしてくれた上城君じゃなくて?」 答えない梓に、今どんな気持ちか知りたい。 「中野君にはムカついただけ」 「そか。じゃあ上城君に対しては?」 「……正直、困る。まだ結婚なんて」 「伝えてる?」 「きっと、そう言うって分かってたから返事聞かなかったんだと思う」 こんな時にでも、何かに耐えるように表情を暗くする。 「……梓も泣いていいよ?」 やっと顔をあげると、鳩が豆鉄砲くらったみたいだ。 「泣くようなことじゃないから」 「私ね、今もだけどずっと、梓にお姉さんみたいだって甘えてきた」 「何よ急に」 「いいから聞いて。だから梓が、私を頼りないって思っても仕方ないと思う。でも、姉が妹に甘えちゃいけないなんて誰が決めたの?私にも梓を支えさせてよ」 きっとどこがで、私は梓に敵わないと諦めの口実にしてた。 でも違うよね? そんなの勝手に思われてたなんて淋しいだけ。 「……私は、結華のことを妹みたいなんて思ったこと一度もない」 三年も一緒にいたのに、まるで初めてお互いについて話すみたい。 「結華は自分で思っているほど弱くない。本当は私なんかよりずっと強いの。結華が私に甘えてるんじゃない。私が結華に甘えてきたの」 想定外の梓の言葉に、今度は私が鳩が豆鉄砲くらったみたいになった。
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2834人が本棚に入れています
本棚に追加