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「殴りたいぐらいムカついたの?」
「……何かに当たりたかったから、つい」
どういう顔で私の前に立つのか、これは会社で会うのが楽しみだ。
「……もう、上城君といい中野君といい、なんなの」
梓が好きだからだよ、とは言わない。
以前、迷っていると呟いた梓。
待ってて、と。
何も言えない私。
どうすれば、いい?
「……俺の結華を困らさないでくれる?」
いつの間にか、扉に身体を預けている翼がいた。
「……なんでいるの?」
「自分の家にいて何が悪い」
「は?」
どうやらずっと上の空だったから気づかなかったようだ。
「相模さん、結華が困ってる」
梓が私にゆっくりと視線を向けた。
「何があったか俺は知らないけど、らしくないんじゃない?」
「あなたに言われたくない」
「ふーん。じゃあ誰に言ってほしいの?」
「……別にそんなつもりは」
「結華はさっきからずっと言ってる。相模さんは無意識に、"その人"に自分を見てもらいって望んでる」
あくまで淡々と話す翼。
口を挟んでいいか分からず、梓と翼を交互に見つめた。
翼と目が合い、大丈夫だよと言いたげな優しい笑みをくれた。
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