13

7/34
前へ
/395ページ
次へ
「殴りたいぐらいムカついたの?」 「……何かに当たりたかったから、つい」 どういう顔で私の前に立つのか、これは会社で会うのが楽しみだ。 「……もう、上城君といい中野君といい、なんなの」 梓が好きだからだよ、とは言わない。 以前、迷っていると呟いた梓。 待ってて、と。 何も言えない私。 どうすれば、いい? 「……俺の結華を困らさないでくれる?」 いつの間にか、扉に身体を預けている翼がいた。 「……なんでいるの?」 「自分の家にいて何が悪い」 「は?」 どうやらずっと上の空だったから気づかなかったようだ。 「相模さん、結華が困ってる」 梓が私にゆっくりと視線を向けた。 「何があったか俺は知らないけど、らしくないんじゃない?」 「あなたに言われたくない」 「ふーん。じゃあ誰に言ってほしいの?」 「……別にそんなつもりは」 「結華はさっきからずっと言ってる。相模さんは無意識に、"その人"に自分を見てもらいって望んでる」 あくまで淡々と話す翼。 口を挟んでいいか分からず、梓と翼を交互に見つめた。 翼と目が合い、大丈夫だよと言いたげな優しい笑みをくれた。
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2834人が本棚に入れています
本棚に追加