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「……想像でものを言うのはやめて」 「確かに想像だよ。相模さんのことなんて知らないし。でも、君の性質はなんとなく分かるから、今の状態は苦しいでしょう?」 「性質?」 その単語にカラーのことだと分かった。 「元々、白黒ハッキリしたい人がここまで迷うなんてよっぽどのことだ。迷っているのは、誰かを傷つけるから? 誰かを本気で好きになったから?」 「……止めてよ」 「何を気にしてるか知らないけど、君はもう答えを知っている」 「うるさい!」 「人は簡単に想いは消えないし、消していいものでもないんだよ」 「止めてってば!」 こんなに取り乱す梓を初めて見る。 俯いて肩を震わせて、強く握った拳も震えている。 「梓」 拳を包んで少しずつ開いていく。 手の内に爪痕が強く残っているのが、梓の苦しみのようで痛々しかった。 「……やっぱり榊原翼なんかキライ」 「うん」 「いきなりプロポーズしてくる上城君もキライ。何も言わない中野君なんかもっとキライ」 小さく呟く梓。 これがきっと、梓の本音。 「真面目で友達思いだけど、来るもの拒ますだし毒舌なくせに女に愛想笑い振り撒くし、肝心なところは頑固できかない」 複雑そうに話す梓には悪いけど、嬉しくなる。 やっと、お互いに本音で話せたね。 梓の想いが分かって嬉しい。
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