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「ゴメンね。梓の気持ちに気づかなくて」
「……結華は悪くない。誰にも言うつもりなかった。だって、私」
「初めて本当に好きになったから恐かったんでしょう?」
今まで、沢山の人達と付き合ってきた梓を見てきた。
でも、時折に見せる寂しそうな表情の意味がわからなかった。
ずっと、探していたんだ。
自分を見てくれる人。
自分自身が本気で誰かに向かい合いたいと願う人。
すぐに出会うわけじゃない。
出会えたって、一歩踏み出さないとなんの意味もない。
梓は自覚することで、やっと一歩踏み出せる。
「……今も恐い。私が私でなくなりそうで」
「私もそうだった。不安なときに梓が言ってくれた言葉にどれだけ救われたか」
翼に視線を向けると小さく頷いた。
一緒に呼吸を合わせる。
「大丈夫」
告げたのは私だけど、ふたり分の思いが込められている。
「私の知っている梓は優しくて真っ直ぐでカッコ良くて、可愛い人」
「……結華」
顔を上げた梓。
瞳いっぱいになった涙が溢れて、初めて見る綺麗な涙だった。
「……ゴメンね。ありがとう」
強く抱きしめられて、私も負けずに力強く梓を抱きしめた。
「結華の力になりたいから、何かあったら言って。んで、結華も私を助けて」
少し身体を離してから私は告げた。
「当たり前でしょう?」
久しぶりに笑った梓を見て、翼に目でお礼をしてからもう一度梓を抱きしめた。
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