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「妬けるから俺寝直すわ」 翼の存在を忘れていたわけではないけど、つい嬉しすぎて置いてきぼりにしてしまった。 「ゴ、ゴメン! あの、私帰ろうか?」 「ダメ。いていいから帰らないで」 「束縛する男は嫌われるわよ。というかウザイ」 「……相模さんは帰ってもいいよ」 「結華を置いて帰るわけないでしょ?」 ふたりとも笑っているのに少し恐い。 でも、良かった。 私ひとりでは梓を引っ張りあげることは出来なかったから。 翼の存在に改めて感謝したい。 「ふたりとも仲良くしてね。私の大事な人なんだから」 梓と翼を交互に見てから言うと、お互いに複雑そうな顔をしている。 「……ありがとう、ございました」 「お礼なら結華に言いなよ。俺は言いたいことを言っただけ」 翼が部屋を出て、静けさが戻ってきた。 「ちょっとだけ、いい?」 「行ってきなよ」 頷いて、寝室に戻ろうとする翼に声をかけた。 「どうした?」 「あの、ありがとね。本当に」 「良かったな、相模さん。スッキリしてた」 「本当にありがとう。梓の心を助けてくれて」 「俺じゃないよ。相模さんの心に触れたのは結華だ。俺は第三者だから、言いたいこと好きなだけ言っただけ」 近づく距離に嬉しくなる。 「ご褒美、欲しいな」
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