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喫煙所に向かうと、周りに誰もいない中で、中野君を見つけた。 こちらに背中をむけているせいで顔は見えない。 「中野君!」 反応はしたのに挨拶も返してくれない。 「おはよう、中野君」 近づいて顔を覗き込むと、思い切り不機嫌な表情で睨まれた。 「……なに?」 「……その顔」 見ると、中野君の左頬が少し腫れて赤くなっていた。 「痛い?」 「いてーよ。思い切り殴りやがって」 「知らないよ。中野君が悪いんじゃない?」 「……俺は何もしてない」 「それで殴るわけないじゃん」 「……アイツ、泣きそうだった」 そう言う中野君のほうが泣きそうな顔してる。 「……泣いて欲しかったの?」 「違う。笑ってくれると思ったんだよ。そしたら、泣きそうな顔したあとに殴ってきたんだ」 「……やっぱり、中野君が悪いじゃない」 呆れてそう言うと、中野君は乱暴に煙草を取り出して吸い始めた。 「正直、分かんないだよ。プロポーズされたやつにおめでとうって言って何が悪いんだよ」 本当に分からないみたいだ。 自分を落ち着かせるように煙草を吸った後に、私の存在を気にしてかすぐに煙草を灰皿に落とした。 「じゃあ、中野君が逆にそうだったらどう思う?」 「俺?」 「付き合っている人から逆プロポーズされて、踏み切れない何かがある時に中野君と同じこと言われたら、どう?」 私でも平手打ちぐらいしてしまいそう。 翼にそんなこと言われたら、間違いなくグーで思い切り殴ると思うけどね。
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