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「用事は済んだか?」 喫煙所近くの自販機で和希が珈琲片手に、まるで待っていてくれたみたい。 「とりあえずはね。これからが大変だけど」 「尚樹も素直じゃないからな」 「……気づいてたの?」 確か、中野君の片想いを聞いたのは和希からだった。 確信はないし本人に言われたわけじゃないから問い詰めるつもりはないって。 「これでも、尚樹との付き合いは長いんだ。誰を見てたかなんて、俺なら分かる」 「……教えてくれても良かったのに」 別に冷やかしたりしない。 自分で中野君の想い人を見つけたのは偶然が重なったから。 もし、タイミングを外していたら今も知らなかったかもしれない。 和希に秘密にされていたのは多少はショックだ。 「悪いな。俺は俺で結華と色々あったのと、男同士の友情に亀裂なんて作りたくなかったからな」 「……和希にも言ってないの?」 「俺は言わなくてもいいと思ってんだ。他の連中は気づかなくても俺や結華が分かっていれば、それでいい。あいつ、決めたら行動早いから」 そうだ、和希はこういう人だった。 優しさの中に芯の強さを秘めた人。 大事だと思う人を、絶対に裏切ったりしない。 「梓も少しずつ、頑張るって」 「相模は自分のことになると鈍いな」 お互いに不器用な親友達を思って笑った。
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