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「結華? 聞いてる?」
「え!? あ、うん、聞いてる!」
電話の向こうで笑いを堪えている姿が目に浮かぶ。
「……笑いすぎ」
「ゴメンゴメン。なるべく早く帰るからな」
「うん。待ってるから」
通話を終えて、中野君に梓の連絡先を教えたことを思い出して、梓の履歴から電話した。
「はーい?」
買い物でもしてるのか、周りが騒がしい。
「あのね、梓の連絡先中野君に教えといたから。メールか電話あるかもしれないからよろしく」
「……それって」
「言っとくけど、中野君が教えろって言ってきたの。私から何か言ったわけじゃないよ」
「分かった。ありがとね」
「うん、じゃあ仕事戻るね」
少しずつ、変わり始める。
私も梓も。
「ちょっと結華。最近、中野君とも仲良いじゃない。どういうこと?」
意外にも変化を嫌う人間も稀にいるものだ。
「……私と中野君見て、どうしてそう見えるのか不思議で仕方ないんだけど?」
「坂井君とも仲は相変わらず良いし、しかもいつの間にか名前で呼び合っちゃって」
仕事の合間の短い休憩時間を、こんな下らない話題で潰されるなんてゴメンだ。
「あの優しい中野君があんたの前じゃ怒ったり、ふたりっきりになったりしてるみたいじゃない!」
優しいってことは、中野君が言っていたうるさい女?
確かに、怒らせたら厄介だ。
だからと言って、余計な矛先を私や梓に向かっても困る。
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