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「私は優しくしてもらったことないよ」 「……中野君は皆に優しいじゃない」 「じゃあ怒らせてみれば? 今以上に嫌われると思うけどね」 こっちは好きで嫌われたわけじゃない上に、ヒガミまで受けるんじゃ迷惑でしかない。 「なんで!? だって、前までほとんど会話なんてなかったのに」 和希と梓、そして翼。 全部が繋がって今がある。 「あんたに関係ないでしょ。中野君とは元々同期入社。話してても不思議じゃない」 まぁ全部を話す気はないし、好奇心なんかで聞かれても答えるつもりはない。 「私、戻るわ」 後輩といい同僚といい、敵を増やしているつもりはないのに増えている気がする。 だからと言って、会社の人間に誰構わず話して良いものでもない。 厄介な人の相手なんてめんどくさい。 「……どうしよっかな」 私に矛先が向いてるなら、梓に害はない。 しばらく、いい状態とは言えないと思うけど、挑発に多少のってしまったし仕方ない。 「せっかく可愛いのに、ため息はもったいないよ?」 無意識に大きなため息が出たらしい。 「……どちら様でしょうか?」 社員は大体頭に入っている。 しかも、顔が良ければ目立つ。 もし、得意先の人だったら悪印象はもたれたくない。 咄嗟に営業スマイルを出して問いかけた。 「はじめまして。黒川 嵐(らん)といいます」 親しみが持てる笑顔。 縮まる距離。 いい男なだけあって、周りの視線が痛い。
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