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定時になり、会社を出てからすぐ中野君に呼び止められた。 「どうしたの?」 「……嵐と会ったって?」 「会ったっていうか話しかけられた」 「嵐には気をつけろよ。何考えてるか分からない奴だし、女にも手早いからな」 「知り合い?」 「大学で一緒だった。気まぐれで行動するタイプだからそこまで仲良いと言えないけど」 「あーなんか、そんな感じするよね」 飄々として世渡り上手。 だけど、群れたりしない。 「利己主義で仲間意識はない。上手いことのせられて調子にのるなよ」 「……分かってるわよ」 相変わらずの言い方に、ムスッとしたのが顔に出たらしい。 「尚樹は結華を心配して言ってるんだよ?」 訂正の言葉が割って入った。 「……おい、和希」 本人の前で、露骨に顔をしかめないでよね。 「お疲れ。黒川さんに連絡した?」 「あぁ、久しぶりに飲みに行こうってさ」 「……別に私に言わなくても良かったんじゃない?」 今日中にって言うから仕事関係だと思ったのに。 「気に入られたんだろ」 中野君の冷静な声に反応したのは私じゃなくて和希だった。 「結華!」 「は、はい!?」 思わず返事してしまった。 「嵐に近づくなよ。個人的にも会うな」 「……えと、理由は中野君から聞いたけど、友達じゃないの?」 「……友達って言うより」 「ライバル、かな?」 まさに今、ウワサの人物が目の前に現れた。
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