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「俺のこと知ってもらえば変わるんじゃない?」
「そうかもね。実際に嵐さんに似たようなのがいたし」
「じゃあ、もっと俺のこと知って?」
キスが出来そうな距離まで近づかれた。
でも、ここで引けない。
動じずに真っ直ぐ瞳を見つめると、嵐さんが視線を泳がせた。
「おい、嵐!」
「それはムリ」
間に入ろうとした和希の背後に回って言った。
「私、今凄く大切な人がいるから。その人を、私は絶対裏切りたくない」
ハッキリと言葉にすると想いも重なって力強く響いた。
「嵐さんにも大事な人がひとりはいるでしょう? だったら、下らないことしてないで早く帰って」
特にトラブルもなかったから、久しぶりに事務所に顔出そうと思ったのに、思わぬ足止めをくらってしまった。
嵐さんを見るとキョトンとした顔が一気に笑顔になった。
「……ユイカちゃんって面白いね」
「それ、嬉しくない、っと」
強く腕を引かれて耳元で囁かれた低い声。
「明日、仕事が終わったら駅前のスタバで」
目を丸くする私や和希達をそのままに、最後まで笑顔で名前の如く、嵐のように去っていった。
「結華、大丈夫か?」
「うん、平気」
気になるのは、嵐さんの瞳。
真っ直ぐさは感じられないけど、本人もそれは分かってるみたいだ。
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