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今まで、雰囲気に流されて身体を重ねたことは何回かあった。
でも、後で決まって後悔する自分がいた。
私はその人のことを何も考えていなかった。
私は私のことに必死だったから、後悔なんてものが残った。
今、私の目の前には翼がいてくれて、硝子細工を扱うみたいに優しく触れる。
私を気遣う声も温かくて、ひとつひとつに想いが溢れてくる。
名前を呼べば、それに応えてくれる。
翼が私の名前を呼ぶのなら、誰の声より私はあなたに応えるし応えたいよ。
安心させるように繋がれた手に力を込めれば、包み込むように握り返される。
誰かと一緒にいて、幸せなんて感じたのは翼が初めて。
優しさと甘い痛みを与えてくれたのも翼だけ。
私の中を翼でいっぱいにして、翼だけしか考えられないよ。
こんな私に、色々な初めてをくれた人。
「……どこにも、行かないで」
掠れてしまった声。
翼が小さく笑った後に、額に目と頬、唇に優しいキスをくれる。
「……こんなに可愛くて仕方ないのに、置いていけるわけない」
目を閉じると、溢れていた涙が零れ落ちた。
「……好きだよ。少しずつ結華を知っていくたびに、そう感じる」
もう、言葉が浮かんでこない。
「翼、私も好き」
きっと、翼や私自身が思っている以上に。
「あなたよりも、ずっと」
そう、思うの。
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