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いい夢を見た後はその余韻に浸りたい。 目を冷ますと、すぐに目覚まし時計が目に入った。 アラームをセットした時間よりだいぶ早い。 ふと、自分が大きな腕に拘束されているのに気づく。 どうやら翼に背中を向けた状態になっていて、後ろからお腹あたりできっちり腕を回されている。 ドラマやマンガだと彼女が目を覚ますと、彼氏は既に起きていて寝顔を見ていたなんてあるのに。 翼の寝顔が見れないのは残念だけど、回されている腕に安心する。 これで今日が仕事でなければもっといいのに。 二度寝すれば、またグッスリ寝てしまいそうでシャワーを浴びようと、翼を起こさないようにベッドを出た。 初めてみる翼の寝顔。 いつも余裕そうで自信家。 でも、翼が不安になるのは私のことばかり。 一瞬のキスを頬に落として、バスルームに向かった。 心地よいシャワーを浴びながら、昨夜のことを思い出すと顔に熱が集まる。 しかも、なんだかとんでもないことを口走った気がする。 シャワーを浴びてから珈琲をセット。 やることもないのでベランダに出て外を眺めた。 一日が始まるまで後少し。 いつも、少なからず人や騒音で溢れていても、この僅かな時間は静かだ。 「風邪ひくよ?」 寝癖のついた髪。 眠そうに目を擦る姿が可愛い。 「おいで」 手を差し出されたら、勿論その手に自分の手を重ねた。
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