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「起きたら結華隣にいないし、髪乾かしてないし」
ドライヤーを用意しながら私をソファーに座らせた。
「ゴメンって」
大きな手が私の髪をすくう度に気持ち良さが広がる。
せっかくシャワーを浴びて目を覚ましたのに、また睡魔に襲われそう。
「はい、終了」
「ありがとう」
「結華は座ってな。朝ごはんは俺が作るから」
「え、でも」
「後半は夢中になってあんまり優しくできなかったからな。仕事行くまでゆっくりして」
翼の言葉に黙って頷いた。
「結華、今日仕事終わってから何か予定ある?」
翼が用意してくれた朝ごはんをいただいている最中、途端に頭に浮かぶ声。
゙明日、仕事が終わったら駅前のスタバで゙
「結華?」
「な、なんでもない。どうして?」
「杏と冬谷が会いたがってるから」
そう言えば、ご飯行く約束までしたのにまだはたせていない。
でも、嵐さんの目的も気になる。
「……あの、ちょっと人と会うことになって」
言った瞬間に眉間にシワが寄って、案の定不機嫌になった。
「同期のやつ?」
「同期の友達らしいんだけど、何か変っていうか。言い寄ってくるわりには私に興味ないみたいだし」
「会おうと思うわけは?」
不機嫌さはあるけど、理由を問う表情は真剣だ。
「……私じゃない、何か目的があると思うの。それに同期の友達が絡んでるみたいで。迷惑もかけたし会うぐらいならと思って」
不安がないと言えば嘘になる。
それを打ち消してくれる人が目の前にいるから大丈夫。
「翼に誤解されたくないから。会ってきてもいい?」
翼が小さくため息をついた。
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