2834人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ダメだって言っても会うつもりだろ?」
「なんで分かったの?」
「結華のことなら大体分かる」
以前の私なら、絶対に会ったりしない。
でも翼と出会って、梓の弱さと臆病な面を知った。
中野君の繊細な想いを知り、和希の存在の有り難さを知った。
近づかないと分からない。
「……会ってきてもいいよ」
言葉とは裏腹に、表情は嫌そうだ。
「ただし、終わったら連絡すること!」
「分かった。ありがとう」
了承をもらい、気兼ねなく会える。
「なんか今のお父さんみたいだったね」
「……結華がハラハラさせるからだよ」
「どこが?」
「……そういうところ」
意味が分からなくて首を傾げると、苦笑いしながら珈琲を飲み始めた。
「嫌な思いさせたならゴメン」
「別にそうじゃないよ。確かに男と会うのはいい気はしないけど、同期のやつの為、なんだろ?」
さっきみたいに不機嫌な表情はない。
穏やかに私の行動を認めてくれている。
「うん!」
「……あいつには借りもあるしな」
「何か言った?」
小さな呟きは私には聞こえなかった。
「なんでもない」
時計を見ると、そろそろ準備をしないといけない時刻になった。
さて、嵐さんのどんな意外な一面が見れるか楽しみだ。
最初のコメントを投稿しよう!