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「……ダメだって言っても会うつもりだろ?」 「なんで分かったの?」 「結華のことなら大体分かる」 以前の私なら、絶対に会ったりしない。 でも翼と出会って、梓の弱さと臆病な面を知った。 中野君の繊細な想いを知り、和希の存在の有り難さを知った。 近づかないと分からない。 「……会ってきてもいいよ」 言葉とは裏腹に、表情は嫌そうだ。 「ただし、終わったら連絡すること!」 「分かった。ありがとう」 了承をもらい、気兼ねなく会える。 「なんか今のお父さんみたいだったね」 「……結華がハラハラさせるからだよ」 「どこが?」 「……そういうところ」 意味が分からなくて首を傾げると、苦笑いしながら珈琲を飲み始めた。 「嫌な思いさせたならゴメン」 「別にそうじゃないよ。確かに男と会うのはいい気はしないけど、同期のやつの為、なんだろ?」 さっきみたいに不機嫌な表情はない。 穏やかに私の行動を認めてくれている。 「うん!」 「……あいつには借りもあるしな」 「何か言った?」 小さな呟きは私には聞こえなかった。 「なんでもない」 時計を見ると、そろそろ準備をしないといけない時刻になった。 さて、嵐さんのどんな意外な一面が見れるか楽しみだ。
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