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「何かいいことでもあったの?」 昼休みに梓と社食でランチ。 梓は外に行きたかったのを私が無理矢理ここに押し込んだ。 「そう見える?」 「うん。結華分かりやすい」 翼といい梓にまで、そんなに顔に出てるのだろうか。 「そういうつもりじゃなかったんだけど、流れで、その」 「……ヤったの?」 「合意だからね!」 一瞬、目が鋭くなった気がして、誤解のないように付け足した。 「……別に、結華が幸せならいいのよ」 「ありがとう。梓も幸せにならないと意味がないよ?」 「当たり前でしょ? 幸せは降ってこないからね」 お互いに顔を合わせて笑った。 「何が降ってこないって?」 「和希お疲れ」 「おー隣いい?」 「どーぞ」 私の隣に和希が座り、なんとなく視線で周りを探してみるけど、見当たらなかった。 「幸せは降ってこないって話してたの。それより坂井君、最近凄いね。売上トップじゃない?」 「そうでもないよ。尚樹とちょっと張り合ってるぐらい」 「なんで中野君?」 同期で仲もいいし張り合ってもおかしくはない。 和希はともかく、中野君はどちらかと言うとそういうことは興味なさそうだけど。 「あ、尚樹。おーい!」 和希の視線の先には中野君。 一瞬、顔が強張った気がする。 梓は背中を向ける形で食事してたけど、振り向かなかった。 「中野君もお疲れ」 「あぁ」 私が声をかけて、中野君が梓に視線を向ける。 梓は気まずそうにして、食事の手を休めない。 「隣、いい?」 梓は黙って頷いた。 話してみるって言っていたのに。 ヒールのつま先で、梓の足をコツンと小突いた。
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