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「そう思うならいつも通り話せよ」 「分かってる」 「結華、なに固まってんの?」 未だにポカーンとしていた私に和希の声で我に帰った。 「……いや、中野君が謝ったから」 「なんかムカつく」 「別に、気遣わったわけじゃないよ。私は聞きたいこと聞いただけ」 まさか、中野君までそんな風に考えていたんて思わなかったから驚いた。 「……サンキュ」 「……え、今の幻聴!?」 小さな声だったけど、確かに聞こえた。 「……神白、お前俺にケンカ売ってるだろ?」 「えぇ! だって中野君が変なんだよ!」 「お前なぁ」 「な、中野君!」 いつの間にか戻って来ていた梓が、顔を真っ赤にして中野君に向き合った。 「あ、あの、この間はその」 珍しく歯切れも悪い。 それは本人ももどかしいようで、小さく息を整えるとはっきり告げた。 「この間は殴ったりしてごめんなさい」 中野君は梓から言われると思わなかったのか、さっきの私みたいにポカーンとしていた。 でもそれは一瞬で、表情も空気も変わった。 「いや、俺も悪かったし。相模も謝る必要ないから」 やっぱりって思った。 中野君が梓に向ける優しくて穏やかな表情。 中野君の言葉に、梓はホッと安堵の表情をしたあとに、可愛く笑う。 「ごちそーさま。結華、行こう」 和希が強引に腕を引いて、慌てて席を立った。
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