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輝いた瞳が一気に冷めたようだ。
「だって本当にそうだもん」
梓は長い溜め息を吐いた。また長いお説教が始まりそうだ。
「んじゃ聞くけど。その榊原翼とやらのせいでムカついたのよね?」
「うん、かなり」
「そのときに付き合ってくれたのは?」
「……坂井君」
あれはタイミングが良かった。たまたま坂井君から連絡があったから、いつものクセのように誘ってしまった。
「結華は今は恋愛対象として考えてないだけで、坂井君の存在はいろんな意味で大きいんじゃない?」
それは大きい。
同期で、皆から頼りにされて仕事もできて私の相手も嫌な顔ひとつしない。
「頼りすぎかな」
今までの恋愛のせいとは言わない。私にもそうなってしまった原因はある。
だけど、どこかで怖がってるんだと思う。
またかって。
ひとりになるあの虚しさと静かさに、家にいる空間でさえ孤独感が襲ってくる。
ひとりは怖い。
でも慣れないと生きていけない。
強くもなれない。
弱くなる自分が嫌だから、仕事に打ち込むしかない。
そんな毎日。
「それは坂井君に直接聞いてみな。案外自分が思ってるもんとは違うもんよ」
「坂井君は優しいからね」
「そうね。とりあえず、結華がすることは榊原翼に連絡すること。坂井君に直接昨日のことを聞くこと」
「……め」
「面倒くさいなんて言わないわよね?」
梓の満面の笑みは怖い。
溢れでる黒いオーラに言葉を変えるしかなかった。
「……はい」
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