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「俺達、先に行くから」 梓達の返事も聞かずに社食を後にした。 「梓、頑張ってたね」 「相模があそこまでどもったの俺初めて見た」 強気で負けず嫌いっていうイメージを持っていたら驚くのも無理はない。 「隣の席の奴らビックリしてたしな」 元々、人気のあった梓。 明日からは違う意味で人気が上がりそうだ。 「悪い、ちょっといい?」 携帯を取り出すと、邪魔にならないところで会話を始めた。 丁度、自販機が目に入り梓にでもと思い紅茶を買った。 「結華!」 通話を終えたらしい和希が、なんだか怒って私に近づく。 「な、なんでしょう?」 「嵐から連絡があった」 「え?」 「俺は会うな、近づくなって言ったはずだけど?」 珍しく和希が怒ってる。 確かに散々言われた。 「あの、嵐さんなんて?」 「今日少し遅れるかもしれないけど待ってて」 私は嵐さんの連絡先を知らない。 会社に連絡でもくれたら良かったのに。 わざわざ和希を通すならあの時、内緒にしなくても言っておけばと後悔した。 この展開を予想して、あの人が考えた手かもと思えてしまう。 「どういうつもりだ?」 「ただ、会うだけだよ」 「それがダメだって言ってんの」 譲らない和希。 心配してくれるのは嬉しい。 「和希が何をそんなに心配してるのか知らない。でも、私は嵐さんのこと全然知らないんだ」 先入観で人を見てたら、素直に言えなくなる言葉や行動をしてしまう。 「人にはたくさんの顔と事情がある」 それで、どれだけの人が悩んで苦しい思いを抱えているだろう。
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