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「嵐さんも、何かあるかもしれない」 「だったら俺も一緒に」 「和希と一緒だったら、嵐さんも誤魔化すと思うから私ひとりで行くよ」 私が折れないのを悟ってくれたようで、諦めのため息をついた。 「……終わったら連絡しろよ」 「多分、何もないよ」 「なにその根拠のない自信は」 和希には申し訳ないけど、自信はあるんだ。 きっと、あの人は私に手を出さない。 「気をつけて行ってこいよ」 「うん」 「結華! いきなりふたりきりにしないでよ!」 梓が凄い勢いよく向かってきた。 「私じゃなくて和希のせいじゃん」 「あれ、尚樹は?」 「煙草吸いに行ったよ」 私だって強引に連れ出されたのに、梓に言われた上に和希は華麗にスルーした。 「俺も行くわ。じゃーな、結華、相模」 自分の選択に自信はあるものの、見送っているとちょっとした罪悪感がうまれそう。 「坂井君、微妙に機嫌悪かった?」 「んー怒らせたかも」 「怒る坂井君も珍しいわね」 表情がコロコロ変わる、いつもの梓だ。 「緊張してる梓も珍しかったよ」 「……緊張した、けど、謝れたし良かった」 スッキリした感じだ。 私はこれから。 正直、嵐さんみたいなタイプは苦手だ。 口で敵わない部分や痛いところを付かれたときの切り返しは自信がない。 「結華も頑張って」 「……何を?」 「知らない。でも、坂井君を怒らしてまでやることなんでしょ?」 翼や和希からは言われなかった言葉だ。 「うん、負けないから」 勝ち負けじゃないけど、嵐さんの企みに絶対に流されたりしない。
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