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何を考えているかなんて、梓といても分からないのに、昨日会った人のことは当たり前だけどさっぱりだった。 「で、なんですか?」 「敬語やめない?」 「分かった。で?」 「ユイカちゃんせっかちだねー」 「はぐらかすなら帰るよ」 料理は相変わらず美味しい。 その料理を前に、下らない言い合いはしたくない。 「和希と尚樹を変えたのは君?」 「……どういう意味?」 なんでもいきなりで反応に困る。 「久しぶりっていうのはあったんだと思う。顔つきが違ったから。特に君といるときが」 「それを知ってどうするの?」 「俺もそうなりたいと思って」 ニコッと笑顔を向けられたら普通は嬉しいはずなのに、違うことが引っかかる。 「私はなにもしてない」 「君のそばにいればわかるのかな」 なりたいと、変わりたいと思うのはそう思う何かがあるから。 弱い自分。 消したい想い。 醜い感情。 認めたくない存在感。 「和希と中野君の背中見てたって嵐さんは変わらない」 「分からないよ?」 「そんなの、ライバルじゃない。ただ嵐さんがライバルでありたいんじゃないの?」 一瞬、表情が固まった。 「ここまで突っ込んでくる女は二人目」 そう言って、泣きそうで苦しそうな瞳を揺るがせる。 翼のマンションで梓が見せた表情に似ていた。
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