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｢本当は私じゃない誰かを見てるでしょう？｣
似てるんだ。
誰かを強く想って泣きそうなところ。
｢誰かって？｣
｢知らないわよ｣
素っ気なく返すと苦笑して、かろうじて笑顔であろうとする。
｢……俺、いつもこんな風じゃないんだよ｣
｢うん。初めて会ったときとだいぶ印象違うね｣
｢……カッコ悪｣
｢いいんじゃない。胡散臭い笑顔振り撒かれるよりよっぽど良いよ｣
今のほうが私はいい。
｢和希と尚樹達の気持ちがなんとなく分かったよ｣
｢じゃあ帰っていい？｣
｢もう少し付き合ってよ｣
予想通りの答えに肩をすくめた。
さっきよりはいい顔になっている。
｢ユイカちゃんお人好しって言われない？｣
｢最近は言われないね｣
｢危うい感じなのに、凛とした雰囲気に圧されるよ｣
私自身は危うさや凛とした雰囲気なんてない。
そう感じるのは、私にとっての特別な存在がそうさせてくれるからだ。
｢彼のせい、かな｣
｢恋人？｣
｢うん。今の私がここにいるのはその人のおかげなの｣
ふと、不機嫌になった翼を思い出して頬が緩んだ。
｢……なに？｣
視線を感じて顔を上げると嵐さんがジッと見ていた。
｢あースゲー好きなんだなと思って｣
改めて他人に言われるとかなり恥ずかしい。
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