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梓に言われ、仕事が終わってから携帯とずっとにらめっこ状態だ。 坂井君と榊原翼。 「あ゙ーもう!」 ベッドに倒れこみ携帯を手放した。 「榊原翼はともかく、坂井君になんて言おう」 昨日はゴメンね? 私頼りすぎかな? 迷惑かけてる? どれも突発的で意味分かんないよね。 脳内でシミュレーションしてみても、すぐに途切れてしまう。 疲れから意識まで途切れてしまった。 まどろみの中で私はひとり暗闇にのまれて、自分の手足さえ見えない。 光が見えない。 誰もいない。 声も出ない。聞こえない。 私だけ…… 「似合ってませんよ」 「は?」 間抜けな声。 時計を見ると、まだ5時前。 なんなんだ。 夢の中でまで言われるなんて。 真っ暗の中でハッキリ聞こえた声と曇りのない笑顔。 まるで、早く連絡してこいとでも言っているようだ。 「シャワー浴びよう」 しばらくボーッとしながらシャワーを浴びる。 もともと、朝は強くない。 目覚めの悪さと夢のことがあって二度寝する気分じゃない。 夢でもあるリアルさ。 それが怖いぐらいリアルで身がすくんだ。 暗闇の中、榊原翼の一言で夢は終わった。 現実は服をまとった私に対して言われたこと。 夢ではまるで、珍しく落ち込んでいる私自身に言われている気がした。 そんな私はらしくない。 "似合ってませんよ" 都合のいい解釈でも、今の私には丁度いい。
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